
小論文研究
小論文とは何か
小論文は、その名の通り、短い論文です。それでは、論文とはどのような文章なのでしょう。論文とは、学術的な研究の成果を表現したものです。学術的な研究とは、自然科学、社会科学、人文科学のことで、まとめて言えば、世界のあり方についての探求であり、その結果を学会や論文・著書などで発表します。代表的な研究機関は言うまでもなく大学で、論文を書く人を研究者と呼び、ほとんどの場合、大学か研究所に所属しています。
論文に書かれていることは、世界についての発見の報告です。論文は、自分の考えを書くには違いありませんが、論文に書かれる内容は個人的な内容ではなく、誰もに関係する、客観的な内容です。この客観性と普遍性が、作文との違いです。
自然、社会、人間についての、これまで知られなかった事実の発見と提示。それが論文です。論文が長大になると、学術書となります。
人間は日常生活で、様々なことを考えます。今日の献立を考えることも、立派な思考です。研究は、人間の日常生活における思考とは異なる思考です。それは、世界のあり方を掘り下げて考えることで、学問と呼ばれます。それを行っているのが大学です。学問は自然・社会・人文科学に分かれます。物理学、社会学、経済学、心理学など、多様な学問があります。学問という活動の中心を占めるのが、論文の執筆と発表です。
このように、論文は学問の中心的な手段なので、日常生活における思考とは異なった方法で進みます。それは、理論と概念を使うことです。小論文も同様で、小論文で一番重要なことは、理論と概念を使って分析を行うことで、この点が作文と異なる点です。具体的には下の方の「小論文の例」にある二つの具体例を参照してください。
理論と概念は、高校生がいくら考えても、思いつくものではありません。したがって、それらは講義によって教えられる必要があります。
ですから、小論文の授業の大きな柱は、論文を書くのに必要な理論と概念を教えることです。
思考を人間が移動することに例えてみます。人間の移動手段は様々で、近所のコンビニに行くなら歩行で十分です。しかし遠距離まで早く到達するためには電車や自動車、さらには飛行機が必要になります。
同様に、論文で行われる思考は、近所のコンビニに行くような移動とは異なり、大きなテーマについて深く考えることです。したがって、飛行機のような特別の手段が必要になります。それが概念と理論なのです。
どのような概念と理論がよいかと言えば、私の専門である社会学がよいと思います。論文は自然科学と人文・社会科学に渡りますが、入学試験で出題されるものは人文・社会科学に関係するものです。社会学は、下記に見られるように、入学試験の小論文に頻出のテーマを含んでいます。ですから、社会学の知識は、小論文にとても役立つと思います。この教科書は市民講座でも使用するものですが、高校生に分かるように平易に説明していきます。この講座では、小論文を書く際の武器となる、概念と理論を提供しようと考えています。
小論文の指導では、個別指導より複数名の生徒による討議が重要です。個別指導には限界があります。それは、自分の思考の世界から出ることが困難です。集団で討議すると、これまで想像もしなかった異なる意見・世界観と出会う可能性があります。そのために、この授業の後半は、実際の問題を使って討議形式で行います。前半は講義、後半は大学で言えば演習(ゼミ)の形式です。つまり、大学と同じやり方で授業を行います。私は早稲田大学で30年にわたり講義とゼミを行ってきました。それを高校生向けにアレンジして提供しようと思います。
小論文指導の条件
小論文は、英語や数学のような他の科目とは異なる部分があります。英語や数学、あるいは国語、理科、社会科は、高等学校のカリキュラムとして確立しています。大学入試の問題を出題するのは大学教員ですが、出題に当たっては高校の教育内容を検討し、それに沿った問題を出します。私も入学試験問題を作成したことがありますが、その際には高等学校の教科書や参考書を十分検討し、その枠内で出題しました。
しかし、小論文は高校の科目にはなく、論文ですから、むしろ大学の教育内容に属するものです。そのため、大学教員は、自分たちがふだん行っている研究のスタイルで出題することになります。そうなると、小論文を指導する教員は、大学教員が一番適切であることになりますが、彼らは大学の教育の仕事で忙しいので、受験生を指導することは通常はありません。ここに小論文指導の大きな問題があります。
社会人のプロ教師という言葉がよく使われるが、当然、社会人ならプロであるとは言えません。小論文の授業に関してプロと言えるのは、論文を書く職業の人で、それは研究者です。文科系では通常、大学に勤務しています。研究者の仕事は文字通り研究を行い、その成果を論文や学術書として公開することにあります。
したがって、小論文指導者の条件は、論文や学術書を書いた実績があることです。野球の実績がない人が野球のコーチや監督になることはあり得ないのと同様です。但し、受験参考書は論文ではなく、小論文指導者の実績にはなりません。論文は自分で書くだけでなく、学会という公開の場に投稿し、討議を行うことが必要です。論文を書く人は、通常学会に所属し、学会で議論します。
高校、塾や予備校で小論文を指導している人の大半は論文を書いたことがほとんどなく、論文とは何かをよくわかっていないと思います。そのために、初歩的な誤りを犯すことがあります。例えば、小論文で一番重要なのは、論理的であることだ、という人もいます。これは正しくありません。論理性は論文の最低限の条件です。論理的でない論文は、意味不明になるので、そもそも論文とはいえません。論文でもっとも重要なのは、理論と概念を使って、新しい考えを提示することです。
あるサイトでは、小論文は一般入学試験では分からない、受験生の人柄を見るのだとあります。これは完全な誤解です。論文の評価において、執筆者の人柄はまったく問題になりません。論文で重要なのは、そこで提示された考えの正確さとオリジナリティです。
小論文の指導では、多くの場合、生徒が書いた論文の添削が行われます。しかし論文の添削は意味がないと思います。添削は論文の微調整ですから、「てにをは」や接続詞の訂正程度で終わってしまう可能性があります。大学の授業で、添削などはやりません。添削は作文の授業では意味がありますが、論文では意味がないのです。添削を行っているのは、指導者が論文を書いたことがないために、論文と作文を混同しているからだと思います。添削では、真っ赤に直すという言葉もありますが、添削の場合、訂正が多いほど真面目な先生だというイメージがあるため、どうでもいい些細な点を赤で修正することがあり得るでしょう。そうなると、生徒はどうでもいい点に関心が行ってしまうことになります。添削で「てにをは」の微調整をするより、新しい理論と概念を提示することで、生徒の思考の視野と射程をはるかに拡張することが、この講座の目的です。
講師の履歴
私の略歴はこのサイトのトップページをご覧ください。早稲田大学では最初は商学部の助教授、後に教授、2004年から国際教養学部教授を務めました。その間、政治経済学部、法学部、文学部、教育学部でも非常勤で授業を担当しました。その他に、慶應義塾大学の文学部と大学院、お茶の水女子大学などでも非常勤で授業を行いました。
論文は多数書きましたので省略します。著書は下記の通りです。
1987 山岸健編『日常生活と社会理論』慶應通信(共著)
1996 北沢裕・桜井洋・寿里茂編著『ライフスタイルと社会構造』日本評論社(共編著)
1997 那須寿編『クロニクル社会学』有斐閣(共著)
2000 情況出版編集部編『宗教を読む』情況出版(共著)
2017 桜井洋『社会秩序の起源 − 「なる」ことの論理』新曜社(単著)
2021 論文「大森哲学と社会秩序」『現代思想』青土社
この中で、主著は2017年刊行の『社会秩序の起源−「なる」ことの論理』新曜社です。
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b455459.html
社会学の本は毎月多数出版されますが、その中で重要と考えられる本の場合は、学会が学会誌で取り上げて書評論文を掲載します。私のこの本は2019年に、日本の代表的な社会学の学会である日本社会学会の学会誌の『社会学評論』の書評で取り上げられました。書評は、PDF
ファイルで読むことができます。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsr/70/1/_contents/-char/ja
また、関西社会学会は、若手企画部会「21世紀の社会学理論の課題を考える―複雑性理論を経由して」を2019年度大会で設置し、複雑性理論と他の諸理論の関係を議論しました。この部会は、私の著書『社会秩序の起源』に触発されて開催されたそうです。
https://www.ksac.jp/2019/01/27/70th_young_sympo/
所属学会(過去に所属したものを含む):日本社会学会、アメリカ社会学会、関東社会学会、早稲田社会学会、日本現象学・社会科学会、Society for
PHenomenology and Human Sciences)
小論文の例
小論文の考え方と書き方の実例を二つ書いてみましたので、ご覧ください。
長いので、別のファイルになっています。
1.「分け与えること」
2.「身の回りのちょっと変なこと」
小論文講座T
以下では、実際に行う授業の内容を説明します。年間の授業は講座TとUに分かれます。小論文講座Tでは、前半90分で私の専門である社会学の基礎的な知識を講義し、後半30分で、宿題として出した小論文を解説し、生徒と討議します。
教科書を使用した講義+宿題で出した問題の分析と討議
授業内容。2時間。全20回
教科書: 宮島喬・他訳、アンソニー・ギデンズ、フィリップ・サットン著 『社会学』 第9版、上巻・下巻 、而立書房、2025年、上巻・下巻とも3,520円
この教科書は通常は大学生が読むものですが、入門書なので高校上級生でも理解できます。この授業は、私が早稲田大学国際教養学部で行っていたものを、高校生用にアレンジしたものです。受講生は当該部分を事前によく読んで来てください。なお、1章から3章は小論文とは縁が薄い内容なので、省略します。
日程 :毎回17:30-19:30。4月10日と7月17日は会場の都合で時間が30分ずれます。
4月03日 第1回:序論。オリエンテーション
4月10日 第2回:第4章 グローバリゼーションと社会変動(18時-20時)
4月17日 第3回:第5章 環境
4月24日 第4回:第6章 グローバルな不平等
5月08日 第5回:第7章 ジェンダーとセクシュアリティ
5月15日 第6回:第8章 人種、エスニシティ、人の移動
5月22日 第7回:第9章 社会成層と社会階級
5月29日 第8回:第10章 健康、病い、障害
6月05日 第9回:第11章 貧困、社会的排除、福祉
6月12日 第10回:第12章 社会的相互作用と日常生活
6月19日 第11回:第13章 都市と都市生活
6月26日 第12回:第14章 ライフコース
7月03日 第13回:第15章 家族と親密な関係性
7月10日 第14回:第16章 教育
7月17日 第15回:第17章 労働と雇用(18時-20時)
7月24日 第16回:第18章 宗教
9月04日 第17回:第19章 メディア
9月11日 第18章 政治・政府・社会運動
9月18日 第19回:第21章 国家・戦争・テロリズム
9月25日 第20回:第22章 犯罪と逸脱
小論文講座U
講座Uでは講義はありません。宿題で出した問題の分析と討議を中心に行います。
授業時間は1時間30分です。
教科書 代々木ゼミナール編『新小論文ノート2026』
日程:毎週金曜日、17:30から19:00
2026年10月2、9、16、23、30日、11月6、13、20、27日、12月5日、計10回
会場は未定
申し込み手続き
講座T、U共に、定員7名です。
日程:毎週金曜日、17:30から19:30
但し、会場の都合で18時から20時の回が2回あります。
開講場所: 恵比寿カルフール Meeting Room B
https://www.ebisu-carrefour.com
渋谷区恵比寿4-6-1 恵比寿MFビル地下1階
入会金は30,000円です。
授業料:1回分は税込で16,500円です。下記の要領で、講座Tは4回分、講座Uは5回分をまとめて振り込みをお願いします。振込口座は、申し込み受付の際にお知らせします。
講座Tは、月4回の授業で、月謝は66,000円です(1回2時間15,000円×4回+消費税)。
講座Uは、10月5回分、11月と12月の5回分、それぞれ消費税込みで、55,000円です(1回90分10,000円×5回+消費税)。
模擬面接の実施と、志望理由書の添削は、1回まで無料。講師は実際に早稲田大学で面接と志望理由書の採点を行ってきました。中国人受験生の面接のために、中国の復旦大学まで出張したこともあります。
この講座は今年から開設したものなので、まだ卒業生はいません。そのために、これまでの実績がまだありません。
教室は17時から20時まで使えるので、授業の前後にいつでも質問してください。
説明会:受講申し込みの前に面談で相談したい方は、お申し出ください。日程を調整の上、お目にかかります。
申し込み方法
「社会学入門T」の申込期間は、2026年2月16日から3月31までです。
受講希望の方は、academy=sakurai.jp
に受講希望と書いたメールをお送りください。送信の際は、このメールアドレスにある=を@に変更してください。
折り返し、振込口座をお知らせしますので、4月分の受講料 66,000円(消費税込み)をお振込みください。必要事項をメールでお知らせします。
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